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遺言・相続:ひとときコラム


(その2)元気になっていくおばあちゃん

 

 花子さんは、65歳で、3か月前に夫の太郎さんが急に亡くなりました。夫との間には、長男の春夫さん、二男の夏夫さん、長女の秋子さんがいます。花子さんは、東京の近郊農家の元地主の長男である太郎さんと結婚し、夫とともに農業を続けてきて、また、農地を転用して、アパートを建てて、アパート経営も始めました。長男の春夫さんが家業を手伝い、後継者となり、妻子ととともに花子さんと同居しています。花子さんは最近病気がちで働くことはできなくなっていました。なお、太郎さんは遺言書を残していませんでした。

 長男の春夫さんには、亡くなった父太郎さんの家業を継いて、アパート経営を拡大したいという強い意向があり、また、太郎さんの遺産の殆どが不動産であることや家業に貢献してきたということを理由に、花子さんの相続分も含めてできるだけ多くの遺産を取得したいと主張しました。母親の花子さんは長男の春夫さん一家と同居していたためか、春夫さんの考えに賛成しましたが、春夫さんはきょうだいとの間では、遺産分割の話し合いができませんでした。そこで、春夫さんは、家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立てました。調停の申立人は、長男の春夫さんと母親の花子さん、相手方は二男の夏夫さんと長女の秋子さんです。

 調停の第1回期日に、花子さんは長男の春夫さんと一緒に出席しました。花子さんは、表情も暗く、春夫さんに連れられて取り敢えず出席したと言った方が良い感じでした。調停委員に対しても、春夫さんばかりが話をして、花子さんは春夫さんの傍で殆ど話をせず、調停委員が花子さんに、相続に対する意向を聞いても、長男の春夫に任せますと言うだけでした。

 次に、調停委員は、調停の相手方である二男と長女から事情を聞きました。二男も長女も、長男が長年実家で両親と一緒に家業に従事してくれたことに一定の理解はするが、ワンマンな長男は生前の父親と衝突することもあり、一人になった母は、長男やその妻に遠慮をしているので、今後のことを考えると、母が相続分を長男に譲ることには反対であると言いました。
そこで、調停委員は、花子さんだけを調停室に呼んで、話を聞きました。すると、花子さんは、ぽつぽつと話をし始めました。長男夫婦が家業に専念してくれたことには感謝しており、長男がより多くの遺産を欲しがっているので、その意向には応じてやりたい。しかし、今後、長男一家との同居が平穏に続くのかどうか不安があり、場合によっては、老人ホームに入居することも考えているので、それなりの遺産を取得したいが、同居して、世話になっている長男の前では、そのようなことは言い出しにくいというものでした。
そのため、調停委員は、裁判官と相談をして、次回の調停期日からは、申立人の春夫さんとは別に花子さんから話を聞くことにして、そのことを花子さんに伝えて、次回の調停期日を決めました。
第2回期日当日、調停室に呼ばれた花子さんは、一人で調停室にきました。その花子さんは、髪も整え、身なりもちゃんとして、手にはハンドバッグを持って入ってきました。そして、世話になっている長男には面と向かっては言えないが、今後、自分が老人ホームに入って、ずっと生活できるだけの財産は確保したいと述べました。調停委員は、花子さんには法定相続分として2分の1があり、正当に主張できることを伝えるとともに、長男と同居している花子さんの立場も考えて、長男の春夫さんを怒らせないように説得しましょうと伝えました。次回も花子さんと単独で話をすることも伝えました。この花子さんの意向が、長男ら3人の子供に伝えられ、次回までに、それぞれ各自考えてくることとなりました。
調停の最後に、次回期日を決めるときに、花子さんは、自分のバッグからメモ帳を取り出し、次回期日をしっかりと書きとめていました。 その後2、3回調停期日が続きましたが、花子さんは出席するたびに、顔色が良くなり、髪の毛も整え、身なりもきちんとしており、まるで、調停期日に出席するのが楽しみであるかのような表情となり、調停委員との話が進みました。最後には、お化粧もして出席しました。
そして、最終的には、花子さんの意向に添う内容の遺産分割の調停が無事成立しました。
花子さんは、おそらく、それまでは、家の中で殆ど話を聞いてもらえなかったのでしょう、調停期日に調停委員に自分の考えをじっくりと聞いて貰える場ができて、調停に出席する毎に段々と元気になっていったのです。


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