遺言相続

平成30年 相続法改正について

平成30年 相続法改正について

持戻し免除の意思表示の推定(新民法903条4項)
(特別受益者の相続分)
新民法903条
共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
2 遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
3 被相続人が前2項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う。
4 (新設) 婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第1項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。
1 概要
新民法 備考
婚姻期間 通算20年以上 例えば、婚姻期間15年で離婚した場合でも、その後再婚して5年以上経過すれば本規定は適用されると解されている
対象 居住用建物又はその敷地 個別事情により店舗兼居住用建物も対象となる
方法 遺贈又は贈与 遺贈又は贈与が行われた時点で婚姻期間が20年経過している必要がある
効果 持戻し免除の意思表示の推定 法律上の推定であると解されている
婚姻期間が20年以上の夫婦間で、被相続人が生存配偶者に対して居住用建物又はその敷地を遺贈又は贈与した(死因贈与契約を含む。以下「遺贈等」といいます。)場合、新民法903条1項の規定を適用しない旨の意思表示(持戻し免除の意思表示)をしたものと推定する規定(同条4項)です。
旧民法下においても、被相続人がその配偶者に対して居住用建物又はその敷地を遺贈等した場合、基本的には持戻し免除の意思表示が認められる場合が多いとの見解や、妻の老後の生活を支えるための贈与について持戻し免除の意思表示を認めた裁判例(東京高決平成8年8月26日・家月49巻4号52頁)などが存在していました。
その中でも特に上記要件を満たす遺贈等は、生存配偶者の貢献に報い、その生活保障を図る目的であることが多く、遺産分割において生存配偶者の取り分を減らす意思を有していないのが通常である、との経験則に基づき本規定が新設されました。
2 施行日
施行日:2019年7月1日
3 問題点、留意点
(1)要件充足性
ア 基準時は遺贈等の時点
遺贈等が行われた時点で婚姻期間が20年経過している必要があり、遺贈等の時点で20年が経過していなければ、この規定は適用されません。
もっとも、遺贈等の時点で現に居住の用に供されていない場合であっても、近い将来において居住の用に供する目的で遺贈等された場合には、本規定は適用されるとの見解が有力です。
イ 婚姻期間は原則「通算」20年で足りる
例えば、婚姻期間15年で離婚した場合でも、その後再婚して5年以上経過すれば本規定は適用されると解されています。
もっとも、この見解に則っても個別事情に照らして、推定が破られる場合はあります。
ウ 店舗兼居住用建物への適用は個別事情による
この場合は、建物の構造や形態等を総合考慮して、類型的に持戻し免除の意思表示が認められる場合か否かを判断する必要があります。
なお、税法上、「居住用不動産」に当たるか否かの解釈については、相続税法基本通達21の6-1(居住の用に供している部分の面積が、土地等又は家屋の面積のそれぞれのおおむね10分の9以上であるときは、その土地等又は家屋の全部を居住用不動産に該当するものとして差し支えない。)が規定しており、参考になります。
(2)本規定の効果
本規定の効果は、「法律上の推定」と解されています。
したがって、持戻し免除の意思表示の有無につき真偽不明となった場合には、持戻し免除の意思表示が「あった」と認定されることに留意する必要があります。
審判及び調停手続においては職権探知主義が採用されています(家事事件手続法56条1項、261条1項、262条)が、実務上は当事者主義的運用がなされているため、事実上、同様の扱いになるものと思われます。
(3)推定を破る事実の有無
本規定は推定規定である以上、推定を破る事実があるかという点にも留意する必要があります。
具体的には、遺贈等の価額、動機、被相続人と配偶者ないし他の相続人との関係、配偶者及び被相続人の職業、経済状態並びに他の相続人が受けた遺贈等の内容及び価額等、諸般の事情を考慮する必要があります。
著者 弁護士 東 正悟
編集 弁護士 佐野 つかさ
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